音楽配信会社とは、自社ブランドを乗せた配信とロイヤリティ会計の仕組みです。ドメイン、ロゴ、会社登記ももちろん大切ですが、それ自体は製品ではありません。製品とは、Spotify、Apple Music、Amazon Music、YouTube Music、Deezer、TIDAL、その他の主要ストアにリリースを届ける配信インフラと、各ストアの利用実績レポートを、レーベルやアーティストへの実際の支払いにつながるステートメントへと変換するロイヤリティエンジンです。
2026年、この配信インフラは「買うか、作るか」の選択です。ストアとの契約交渉、DDEXの実装、売上レポートの解析、サブレーベルの会計処理を、今でも自社で手がけることはできます。あるいはホワイトレーベルインフラをライセンスし、すでにあるインフラの上に自社のブランド、料金、クライアントを乗せることもできます。これこそが、会社として成り立つかどうかを決める選択です。
残りのセットアップ(法人設立、銀行口座、契約、サポート)は、どちらの方法でも自社で担います。変わるのは、サプライチェーンのどこまでを自社で持つか、そしてサービスの利用者にどう課金するかです。
自社ブランドで音楽配信を再販売するには、どのようなインフラが必要ですか?
必要なのは4つの層です。ストアへの配信(DDEXフィードと、ストアが求める場合はそのプラットフォーム独自形式のパッケージ)。ISRCとUPCを軸にしたカタログとメタデータ。ストアのレポートを分配設定とステートメントに変換するロイヤリティ処理。そして、クライアントが実際に使う自社ブランドのフロントエンド(登録、リリースのアップロード、ステートメント、請求)です。最初の3つはホワイトレーベル事業者が提供します。LabelGridの2つの製品の違いが出るのはフロントエンドです。現在利用できる公開REST APIのEngineでは、フロントエンドを自社で構築します。LabelGridのホワイトレーベルポータルであるImprintは、自社ドメイン上ですぐに使えるフロントエンドです。一般提供はされていません。
商用面にも決まった条件があります。LabelGridで再販売するには、APIプラン(最低Starter API、年額$1,668、2年間の契約で毎年前払い)、本人確認を含むオンボーディング審査、第三者配信のためのKYC/KYB、そしてAdvanced Services Addendumが必要です。レーベルとアーティストは、それぞれ自身の名義とクレジットでストアに表示されます。
音楽配信会社が実際に行っていること
ディストリビューターは、権利者とストアの間に立つ存在です。ストアへ向けては、各リリースをDDEXのElectronic Release Notificationとして送信します。これは、リリースの内容、収録された音源、ストアがそのリリースを提供できる商業条件を記述した、XML形式のNewReleaseMessageです。ストアからは、各ストアの売上・利用レポート(ストアが採用している場合はDDEXのDigital Sales Reporting、それ以外はストア独自の形式)を取り込み、ロイヤリティを照合して権利者への支払いにつなげます。2006年に設立されたDDEXが、これらのメッセージ規格を公開しています。実装にDDEXへの加盟は必要ありません。LabelGridも会員ではなく、ERN 3.8.2、4.3.0、4.3.1、4.3.2を生成しています。
このメッセージに含まれる識別子は、単なる飾りではありません。ISRCは録音(サウンドレコーディング)を識別し、UPC(GS1のGTIN)は商品としてのリリースを識別します。楽曲のISRCをリリースの識別子として使うのは識別する対象の取り違えです。取り込み時にこの2つのコードを正しく設定してください。ストアはこれらを照合の基準とし、その後の売上レポートもここに紐づけられるからです。
新規ディストリビューターが売り込むそれ以外の要素(ピッチング、マーケティング、「あなたを有名にします」といった謳い文句)は、どれもなくても成り立ちます。しかし配信と会計だけは欠かせません。リリースをストアへ届けられず、お金を正しい相手に還元できないのであれば、それは配信会社ではなく、ただのウェブサイトです。
楽曲をストアに届ける3つの方法
このうち1つを選んでください。セルフサーブのアーティスト向けプランはこの選択肢に含まれません。アーティストやレーベル向けの標準プランは、再販売のライセンスではないからです。
| ルート | 自社で構築するもの | 購入するもの | 利用開始時期 |
|---|---|---|---|
| 自社構築 | DSPとの契約、ERN/DSR、QC、ロイヤリティの照合、アーティストステートメント、UI、請求、サポート | ホワイトレーベルベンダーからは何も購入しません。自社がベンダーになります。 | 各ストアの承認が下りしだい |
| Engine(LabelGrid API) | UI、認証、KYC、請求、エンドユーザーサポート | 配信、カタログ、DDEX、ロイヤリティ計算、サンドボックス。Starter APIは年額$1,668(年払い)。 | 今すぐ |
| Imprint(LabelGridのホワイトレーベルポータル) | 設定のみ。UIの実装は不要。 | 有効なAPI(Engine)プランに上乗せするImprintのティア。自社ドメイン上の自社ブランドのポータル、自社で設定する料金プラン、自社のStripeアカウントへの請求、自社で設定するスケジュールでの支払い(決済・支払いアドオンが必要) | 一般提供なし |
Engineはapi.labelgrid.com/docs/apiで公開されているパブリックREST APIです。リリース、トラック、分配、配信ステータス、分析、ステートメント、Webhook、そして全プランで使えるサンドボックスを提供します。認証はBearerトークン方式です。オンボーディングはLabelGrid主導で進みます。まず審査、次にAdvanced Services Addendumへの同意、その後プランの課金が発生し、API機能が有効になります。標準プランの7日間無料トライアルにはAPIやサンドボックスへのアクセスは含まれません。APIのトライアルはありません。
公開されているEngineの料金は以下のとおりです(年払い、2年間の契約、リリースごとの手数料なし)。
- Starter API、$1,668:アクティブトラック数3,000件まで、レーベル5件まで、月間ロイヤリティ処理額$35,000まで
- Growth API、$4,668:トラック数10,000件、レーベル25件、月間$115,000まで
- Scale API、$10,548:トラック数25,000件、レーベル100件、月間$350,000まで、専任アカウントマネージャー付き
- Custom API:トラック数・ロイヤリティ上限はカスタム、レーベル数無制限
Starter、Growth、Scaleでトラック数の上限を超えた場合は、従量課金ではなく、上位プランへのアップグレードをご相談いただく形になります。これらのプランのサポートSLAは、初回応答が2営業日以内です。最新の数値は料金ページのAPIプランをご覧ください。
Imprintは独立した製品ですが、有効なAPI(Engine)プランの上で動作します。費用はAPIプランにImprintのティアを加えたものです。自社ドメイン、自社ロゴ、自社プランで、すぐに使えるポータルです。再販売事業者の顧客は、Stripe Connectで接続された再販売事業者自身のStripeアカウントを通じて、再販売事業者に対して支払います。公開のセルフサーブ決済ではありません。決まった日程での立ち上げが必要な場合は、現在利用できるEngineを選んでください。詳細はホワイトレーベルポータルのページをご覧ください。
再販売はEngineおよびImprintの顧客に認められたB2B権利です。最低プランはStarter APIです。第三者配信には、本人確認を含む審査、必須のKYC/KYB、2年間のAddendumへの同意が必要です。LabelGridの標準的なアーティストプラン・レーベルプランには再販売権は含まれません。
サブレーベルのロイヤリティ計算と、お金を動かすのは誰か
新規ディストリビューターが過小評価しがちで、しかもホワイトレーベルベンダーが用意してくれるか、自社に任されるかが分かれるのがこの部分です。
クライアントはレーベル(およびそのレーベル傘下のアーティスト)です。それぞれに楽曲の分配設定、ステートメント、支払い方法が必要です。Engineでは、LabelGridがステートメント、元帳、支払いリクエストといった計算と記録を行います。ただし支払い自体は自社が行い、自社の口座から送金します。APIプランのArtist Payoutsは、残高、経費、「このステートメントを支払い済みにする」といった記録のための機能であり、アーティストに実際に送金する決済処理の仕組みではありません。LabelGridに送金まで任せたい場合は、ポータルを通じて自社で設定したスケジュールでステートメント付きの支払いを実行するImprintが該当します。支払い機能はImprintコンソールのアドオンで、ティアとは別料金です。
ロイヤリティ計算は、分配設定、ステートメント、元帳をまとめた製品名です。分配設定はリリースの取り込み時に行ってください。最初のステートメントが届くまで待っていると、本来70/30であるべきだった配分が50/50になっていたことに、お金がすでに割り当てられた後で気づくことになります。
自社ブランド・自社の料金で配信サービスを運営できますか?
できます。LabelGridのどちらのホワイトレーベルの方法でも、レーベルやアーティストが自社に支払う金額は自社で決めます。違いは、請求の仕組みを誰が構築するかです。
Imprintでは、自社ドメインで登録したユーザーが、自社で設定したプランに申し込みます。そのサブスクリプションは接続先のStripeアカウント上で作成されるため、売上は自社に入ります。Engineでは請求の仕組みを自社で構築します。レーベルに課す料金は、LabelGridの決済ではなく、自社のソフトウェアと自社のStripe(または他の手段)によるものです。いずれの場合も、クライアントが自社に支払う金額と、自社がLabelGridに支払う金額は別物です。この2つを混同すると、再販売の収支計算は最初の月から狂います。
ストアから受け取る取り分も、一律のパーセンテージではありません。APIプランでLabelGridのDSP契約を通じて配信する場合、標準的なストアでは総収益の95%(5%の配信手数料)、UGCおよびContent IDプラットフォームでは80%(20%の手数料が5%に置き換わる形で適用され、両方が重複することはありません)を受け取ります。自社のストア契約を持ち込む場合は、どのAPIプランでもSOBO配信を利用できます。この場合、ストアは自社との契約に基づき直接支払いを行い、LabelGridはその収益から一切差し引きません。100%の取り分が得られるのはこのSOBOのケースであり、LabelGrid自身の契約によるものではありません。
自社構築が実際に意味すること
ライセンス利用は必須ではありません。すべてのフィードを自社で持ちたいなら、自社構築も現実的な選択肢です。ただし、それは「会社を始める」こととは別の仕事です。
各ストアには独自の契約と独自の取り込みルールがあり、業界では複数のERNバージョンが併用されています。DDEXが公開している最新のERNは4.3.2です。それでも、本番用のエンコーダーは複数のバージョンに対応する必要があります。Appleへの主な納品経路はApple独自のパッケージ形式で、ERNメッセージではありません。プラットフォーム固有のパッケージが必要なストアでは、そのパッケージも自社で構築し、その上で売上レポートを取り込みます。DSR(複数のレポートプロファイルを持つフラットファイル形式)を採用するストアからはDSRで、それ以外のストアからは個別のインポートで受け取り、6か月前には正しかった(あるいは正しくなかった)ISRCやUPCとその行データを突き合わせる必要があります。
そのネットワーク上で送信者としてのID(DDEX Party Identifier)も必要になります。多数の小規模レーベルを集約する場合、DDEX自身のガイダンスでは、クライアントごとにDPIDが必要になることもあるとされています。ここまでは秘密でも何でもありません。DDEXはこれまでに4,000件を超える実装ライセンスを発行しており、DPIDは通常、ライセンスとあわせて割り当てられます。難しいのはストアとの契約そのものです。契約ごとに個別の交渉があり、供給元として受け入れるかどうかは各ストアが判断します。
ホワイトレーベルインフラなら、こうした仕組みがすでにつながった状態で手に入ります。LabelGridは配信プラットフォームカテゴリーにおけるSpotify Preferred Providerです。Engineを通じて送信したカタログは、「LabelGridが配信」としてではなく、自社のレーベル名と著作権クレジットのまま届きます。
それでも自社で担う部分
配信の仕組みをライセンスで利用しても、会社としての務めがなくなるわけではありません。以下の項目は、どちらの道を選んでも自社の担当として残ります。
- 事業を行う法域での法人設立とビジネス銀行口座の開設。登記についてはブログ記事ではなく現地の専門家に相談してください。
- オンボーディングするレーベルやアーティストとの契約。期間、テリトリー、独占性、テイクダウン、契約終了時のISRC・UPCの扱いを定めます。
- 自社ユーザーに対するKYC。第三者配信を行うため、LabelGridの再販売パスでは必須です。自社はユーザーを審査し、LabelGridは自社を審査します。
- サポートは自社の担当です。クライアントとの関係を保有するのは自社であり、ISRCが見つからないといった問い合わせに答えるのも自社です。
- 責任の所在。配信したコンテンツに対するDSPのテイクダウン、アカウント停止、権利執行の対応は、EngineでもImprintでも自社が負います。UIがホストされているという理由でLabelGridに移ることはありません。
契約書、登録フロー、リリースフロー、ステートメントにLabelGridの名前を表示する必要はありません。自社が管理する画面は、自社のものであり続けます。例外は1つで、顧客から必ず聞かれるストアです。YouTube Musicの動画では第三者の名前が表示されます。これはLabelGridがYouTubeに直接配信していないためです。この記事に登場するその他の主要なストアは、いずれもLabelGridによる直接配信です。
よくある質問
2026年に音楽配信会社を始めるには、どうすればいいですか?
法人を設立し、銀行口座を開設し、取引するアーティストやレーベルと契約を結びます。次に、楽曲を実際にストアへ届ける方法を選びます。DSPと交渉してDDEX配信とロイヤリティ計算を自社で構築する方法もあれば、ホワイトレーベルインフラをライセンスして自社ブランドを乗せる方法もあります。LabelGridで現在利用できるのは、パブリックREST APIのEngineです。自社ブランドでの再販売は、EngineおよびImprintの顧客に認められたB2B権利です。標準のアーティストプランには再販売権は含まれません。
ホワイトレーベル音楽配信とは何ですか?
ホワイトレーベル音楽配信とは、配信・カタログ・ロイヤリティ処理を自社ブランドで再販売することです。ストアにはプラットフォーム名ではなく、レーベル名やアーティスト名、著作権クレジットが表示されます。LabelGridには2つの形態があります。EngineはAPI専用プランで、現在利用可能です。UI、請求、サポートは自社で構築します。LabelGridのホワイトレーベルポータルであるImprintは、自社ドメイン上ですぐに使える自社ブランドのプラットフォームで、料金は自社で設定できます。有効なAPI(Engine)プランの上で動作します。Imprintはセルフサーブではありません。
音楽配信会社を始めるには、どのくらいの費用がかかりますか?
費用を見積もれるのはインフラ部分です。LabelGrid Engineは公開されたAPIプランで販売されており、年払いで、2年間の契約となります。Starter APIは年額$1,668(アクティブトラック数3,000件まで、レーベル5件まで、月間ロイヤリティ処理額$35,000まで)です。Growth APIは$4,668、Scale APIは$10,548です。APIプランにリリースごとの手数料はありません。自社構築にはDSPとの交渉、DDEXの実装、独自の会計処理が加わりますが、これらはLabelGridが公開している数値ではありません。法人設立、銀行口座、法務、サポートの費用は、どちらの方法でも別途かかります。
自社ブランドで音楽配信を再販売できますか?
はい、APIプラン(Engine)であれば可能です。最低でもStarter APIが必要です。第三者配信には、本人確認を含む審査、必須のKYC/KYB、Advanced Services Addendumへの同意が必要です。B2C顧客は再販売できません。エンドユーザーとの関係は自社が所有し、料金設定も自社で行い、配信したコンテンツに対するDSPのテイクダウンやアカウント停止の責任も自社が負います。自社が管理する画面にLabelGridの名前を表示する必要はありません。例外はYouTube Musicの動画で、LabelGridがYouTubeに直接配信していないため、第三者の名前が表示されます。
自社でプラットフォームを構築する必要がありますか、それともライセンスできますか?
始めるのにDSPとの連携を自社で構築する必要はありません。EngineはパブリックREST API、サンドボックス、DDEX ERN 3.8.2、4.3.0、4.3.1、4.3.2への対応、ロイヤリティステートメント、Webhookを提供します。ただしUI、認証、KYC、請求、サポートは自社で構築します。UIを構築せずにすぐ使えるポータルが必要な場合は、LabelGridのホワイトレーベルポータルであるImprintが該当します。有効なAPI(Engine)プランの上で動作し、セルフサーブではありません。決まった日程での立ち上げが必要な場合は、現在利用できるEngineを選んでください。
はじめ方
運営したい会社がディストリビューターであれば、セルフサーブのアーティストプランではなく、APIプランから始めてください。パブリックAPIドキュメント(ログイン不要)をご覧ください。ディストリビューター向けページは製品の全体像を、ホワイトレーベルの設定とAPIの概要は運用面をそれぞれ解説しています。トークンが発行される前に、LabelGridが審査、KYC/KYB、Addendumへの同意を行います。まずはサンドボックスで開発を始めてください。